細木数子を踏み潰す





 六星占術には 「極意」 と呼ぶべきものが存在する。 それは先祖供養である。 細木流の先祖供養を実行した者は、一人の例外もなく幸せへの道を歩んでいることからも分かるように、その効果には信頼できるものがある。
 ただし中には愚かな人間もいて、先祖供養を熱心に勧めるのは墓石業者や仏壇業者との繋がりがあるからだと疑う者もいる。 しかし 業者と組んでいるなどという事実は一切ないそういうことを疑う連中は心が曲がっているとしか言いようがない
………… だそうです。


 「六星占術と大殺界」 のときと同じように、この 「先祖供養」 も細木数子が自著で書いていることである。

 とくに今回は、 “細木流の” 先祖供養について、本人曰く 「決定版」 であり、 「究極のノウハウ」 が書かれているという 『幸せになるための先祖の祀り方』 ( KKベストセラーズ )を参考にした。
 この本では第一章の冒頭から、 「この一家の信じられないような修羅」 などという不安感を煽るタイトルをつけて読者を脅す手法をとっている。 こういった最初に脅しをかける手法は霊感商法などではお馴染みだが、知らない人は冒頭から細木数子のペースにハマってしまうことだろう。 読者が疑問を持ちそうなところは、先回りして芽を摘んでおくあたりもさすがである。
 しかし、所詮は細木数子。 調べるとすぐにボロが出て、その主張がメッキであることがバレてしまう。 以下では、彼女が使ったタイトルを真似て、その主張のトホホぶりを徹底的に見ていくことにしよう。


「墓石業者との繋がり」 について

 細木を信奉している人の中には、この話を単なる噂だと思っている人もいるかも知れない。 しかし、これは単なる噂などではない。 業者と繋がっているというのは事実なのである。
 かつて細木数子は、 「久保田家石材商店」 という業界大手の墓石業者と組んでいたことがあった。 また仏壇は 「翠雲堂」 というところと組み、両社の社員を勉強会や個人鑑定に同行していた。 久保田家石材にいたっては、当時全国に7箇所にあった細木事務所が実は全部、同社の現地営業所や関連会社の事務所でもあったのである。
 とはいえ、この頃はまだ細木自身、この事実を隠すような姑息な真似はしなかった。 ハッキリと認めていたのである。 ただし当然このことは批判されたし、現在にも負けないくらい当時も差別発言があったため、前回の細木ブームのときは姿を消すハメになった。
 本来ならこのまま消えていたとしてもおかしくなかったが、そこは細木数子。 これまでのブームにも勝る絶大な人気と影響力を持って見事に復活した。
 そしてこの復活に際し、彼女は 「今までとは違う」 ということを強調するようになった。 過去は過去、現在は違うというわけだ。
 自著 『幸せになるための先祖の祀り方』 ( KKベストセラーズ )の中では、 「私は墓石屋さんや墓園業者、あるいは仏壇屋さんと組んでいるわけではありません。 そうした疑問を抱く方もときおりおられますが、心が曲がっていることを残念に思います」 と書き、 『新潮45』 ( 2005年4月号 )のインタビューでは、 「ずっと関係があると言われてきた墓石屋だって、十年も前に潰れて今はどうなっているのかも知らない」 と語っている。
 この話を真に受けてしまうと、 「あぁ、復活してから改心したのか」 などと思ってしまう。 しかし、よ~く考えてみよう。 この話を語っているのは、あの細木数子だ。 普通の方なら、彼女が事実に反することも言ってのける人物だということを良く理解しているだろう。
 当然、真に受けたりせず、徹底的に疑うべきである。 そして私自身それを実行した。 するとどうだろう。 予想通りの結果を得ることになった。 そう、現在でも細木数子は墓石業者と繋がっていたのだ。

 まず墓石業者についてだが、現在細木数子と組んでいるのは 「玉実己」 という墓石屋である。 この会社の本店は、京都市西京区にある細木の京都事務所と同じ場所にある。 つまり京都事務所だと思って本に載っている住所( 最新の平成18年度版の本にも住所が載っている )に行くと、そこにあるのは 「墓石業者の本店」 なのである。 ( 『細木数子 地獄への道』 ( 鹿砦社 )では京都事務所は空き家だとして写真が載っているが、実は、この本に載っている古アパートは京都事務所の隣のアパートである )さらに、細木が 「10年も前に潰れて今はどうなっているのかも知らない」 と語った久保田家石材商店についても、実はこの 「玉実己」 という墓石屋自体が久保田家石材商店なのである。

 またこのほかには、 「光仙堂」 という仏壇屋( 久保田家石材商店のグループ会社 )と組んでおり、 『六星新聞 水色の会 』という信者向けの発行紙では、 「玉実己」 と共に指導指定店と称してデカデカと広告を載せて、信者にこの2社を勧めている。
 だがこれだけではない。 細木の東京事務所である 「有限会社 薫白莟」 の代表取締役と、久保田家石材商店のグループ会社 「オーザン」 の代表取締役は同一人物なのである。
 この2社のトップが同一であることを 『週刊文春』 ( 2004年10月7日号 )の記者に突っ込まれると、 「私は女が会社を持つのはよろしくないと思っている。 それで、 『あんた名前貸してくれ 』と頼んだ」 と事実を認めている。
 結局、 「疑うやつは心が曲がってる」 だの 「業者とは組んでない」 だのと言ったところで、いつものごとく大嘘だったということだ。 やれやれ ……

 続いては佐賀地裁で訴えられた話である。 細木数子は、先祖供養について初めて書いた 『運命を開く先祖のまつり方』 ( 世界文化社 )という本の中で、次のように書いている。
 「大事なことはいかにお金をかけるかということではなく、ふだんから、いかに陰徳を積んでおくかということなのです」
 この発言自体は、まったくそのとおりだと思う。 しかし問題は、この発言が口先だけで、言ってることとやってることが全く違う ということである。

 具体例を示そう。
 細木は1993年に、 「不当に高額な墓を買わされた」 として、総額1100万円の損害賠償を請求され佐賀地裁で訴えられた。
 訴状によれば、訴えたのは佐賀市に住む当時55歳の主婦( 以下 「Aさん」 )。 最初に彼女が細木と出会ったのは1985年のことで、ヨーロッパ留学を予定していた長女について占ってもらうために個人鑑定を受けた。
 このとき細木からは、 「この恥知らず」 と罵倒され、 「この子は23歳で自殺する。 そういう因縁を持っている」 と脅されたという。
 そして、 「因縁を切るためには 『五輪塔 』の墓を建てることだ」 と言われ、後日開催される 「勉強会」 に参加するよう勧められた。 この間、約10分で鑑定料は6万円。 2週間後、東京で開催された勉強会( 参加費一万円 )に参加したAさんは、細木が力説する五輪塔の重要性を聞くが、結局あまりにも高額であるため夫が許してくれず、このときは墓を買うことはなかった。
 ところが3年後の1988年に夫はガンで死亡。 娘はヨーロッパ留学へと旅立つことになった。 夫が亡くなることで不安を感じていたAさんだったが、そんな彼女に 「六星占術 細木数子特別講演会 入場無料」 と書かれた新聞広告が目に留まった。
 無料ということで早速参加してみると、300人ほどの聴衆が集まっていたという。 講演内容は相変わらず 「因縁や祟りをなくすために墓を建てなさい」 というもので、講演が終わると有料の 「勉強会」 への参加を促された。
 再度参加したAさんは、個人鑑定も受けることになった。 このときに持参させられたのは、鑑定料20万円と戸籍謄本、家系図、墓と仏壇の写真。

 夫が亡くなり経済的にも苦しいということ、そして留学中の長女が心配だと悩みを相談すると、 「ほら、みてごらん。 あんたのようなバカは見たことがない。 私の言ったとおりにすればご主人は死ななかった」 と細木に言われ、持参させられた墓の写真を見せると、 「こんなの墓じゃない。 このままでは不幸がどんどん起こる」 と脅されたという。

 そして、このときは石材店の社長や社員が同席しており、その場ですぐに契約の話になった。 このとき 「夫が亡くなり経済的にも苦しい」 と窮状を訴えたが、 「借金してでも買わないと大変だ」 と言われ、その後も久保田家石材商店の社員と細木の秘書が再三Aさん宅を訪れ、 「細木先生の言うことに間違いはない。 借金をして墓を建てても必ずうまくゆく」 と説得され、結局、自宅の土地を担保に銀行から借金することになった。

 総額は細木が示した図面にもとづき、久保田家石材商店と交渉の結果、墓石代( 据付工事含 )約900万円、墓園の永代使用料が約100万円、そして旧墓の解体料なども含めると、総額で1000万円以上の額になった。

 訴状によれば、 「( 執拗な勧誘により )一種の思考停止状態に陥って、返済の目途のないまま」 借金をして墓を買ったため、 「運勢が上向くどころか、たちまちその返済に窮し、他に収入の途もなかったことから経済的に追いつめられ、借入金返済の重圧に苦しみぬくことになった」 とあり、 「細木講演会」 → 「勉強会」 → 「個人鑑定」 の最終目的は 「墓石の販売」 であるにもかかわらず、その目的を隠して、顧客の不幸、不安につけこむ詐欺・脅迫的な違法行為だと指摘している。

 さらにAさんが依頼した弁護士が、800万円余で購入した墓石を別の2業者に見積もらせたところ、2業者とも約200万円との見積もり結果を出した。

 だが残念ながら、この裁判は訴えから3年後の1996年12月26日に、原告が提訴を取り下げたことで決着がつくことはなかった。 細木側と原告との間でどういうやり取りがあったのかはわからないが、せっかくの勇気ある行動だっただけに悔やまれる結果である。

 ただ、決着がつかなかったとはいえ、細木数子が相談者に高額の墓石を勧めているという現実は変わりがないし、この項の最初で書いた 「言ってることとやってることが全く違う」 というのも事実である。

 『京都に蠢く懲りない面々』 ( 講談社 )によれば、京都市下京区で自営業を営んでいるB夫妻のときも、細木の個人鑑定を受けると 「このままだと不幸は続く。 救済は先祖供養しかない」 と強い指導を受け、当初1800万円の墓を勧められたが、とてもそんなお金はないということで、結局1000万円近くの墓を借金をして建てることになったという。

 また都内在住のある占い師の方から、最近のこととして伺った貴重なお話もある。 その方によれば、2004年ごろ、 「息子のことで」 と身なりの良いご婦人が来店。 ご子息は持病があり、それが原因で無気力になり、引きこもりがちになってしまったという。

占い師「 ではどうすれば気力がわいてくるか、また良い治療法や病院があるかどうかを見ましょう。 お母様がどう息子さんに接したらよろしいかも拝見します 」
婦人「 いえ実は、ある方のツテを頼って細木数子先生にみていただいたのです。 そのことで …… 」
占い師「 ほう? では何故私のところに?」
婦人「 神楽坂に夫婦で相談にあがったのですが、そこで仏壇を買って細木先生のすすめる 観音様をお祀りしなさいと言われました。 いままでの仏壇ではダメなんだそうです。 お墓も細木先生の知り合いの京都の霊園に新しく建立すれば息子が良くなると言われたんですが …… 」
占い師「 おいくらですか? 」
婦人「 900万と言われました。 細木先生のご紹介なら安くして下さるそうです。 私はすぐに買うつもりだったんですが、主人は 『よく考えます 』と言って私を連れて帰りました。 さすがに細木先生の前では何も言いませんでしたけど、帰り道 『あんなのはインチキだ 』と言ってとりあってくれませんでした 」
占い師「 先祖代々の宗旨を変えてしまうのは、ご先祖に対して如何なものでしょうか 」
婦人「 とにかく、私はそれで息子が立ちなおるならいいんです。 先生、お墓を買っていいかどうか占ってください。 それから主人をどうしたら説得できるかも見て欲しいんです。 ダメなら私の実家からお金を出してもらいます! 」
占い師「 …… わかりました 」
 この占い師の方によれば、実際に占ってみると、 「このご婦人は誰が何と言おうが細木の言うとおりにお墓を買うつもりでいる」 と出たという。
 「ご先祖様はそれでお喜びなのでしょうか?」 と占ってみると、 「綺麗なお墓を立てようという志はお喜びである。 その志をご先祖様はお喜びである。 細木の言うとおりに建てよということではなく、先祖の事を思ってくれた気持ちが嬉しい。 宗旨変えはしてくれるな。 そこまでしなくても息子のことはよくわかっている」 と出たという。
 この占い師の方自身、先祖代々の宗派を捨てたり、高額なお墓を子孫に要求するご先祖様が果たしていらっしゃるのか、という疑問を持っておられたそうだ。
占い師「 このことは息子さんにはお話なさいましたか? 」
婦人「 いいえ、言っていません。 息子が負担に思ってもいけませんので 」
占い師「 まず、親がそこまでの犠牲を払おうとしていることを、息子さんに伝えるべきだと思います。 それから、菩提寺のお寺にご相談下さい。 宗旨を変えるなど、軽々しくするものではないと思います。 まして縁もゆかりもない京都にいきなりお墓を立てられては、ご先祖様も戸惑われるのではないでしょうか。 細木先生に勧められたお墓が普通の石材店ではおいくらくらいのものなのか、複数見積もりを取ってください。 それで果たして900万かかるものなのか、調べてみてください。 立派なお墓をご供養しようとする貴女様のお志は充分ご先祖様に通じていると思います。 菩提寺のお寺さんとよくご相談下さい 」

 そこで時間が来た。 それから程なくすると、占い師のところに電話がかかってきた。 話を聞いてみると、ご婦人は、とんでもない脳内変換を起こしていた!

婦人「 先生( 占い師のこと )が買ってもいいと勧めてくださったので、細木先生にお墓をお願いしようと思います。 菩提寺に相談して宗旨変えはやめましたが、細木先生のご指導のもとに菩提寺のお墓を立て直そうと思います。 どうしたら主人を納得させられるでしょうか」
( 占い師談 「買ってもいいと勧めてなんていませんよ! 菩提寺に相談すればストッパーがかかると思ったんです。 でもお客様は自分の望むところしか聞いてないんですね」 )
 結局そのときは、 「お墓のこととご子息のことは別問題ですよ。 複数の業者さんの見積もりも大事ですよ」 と言うのが精一杯だったという。 ただ、気になるご婦人のその後は、ご主人の反対もあって、まだお墓は建てていないようだが ……。

 事」 というのが彼女の本音のようである。